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コーポラティブ・ハウス

 今日はドームホテルのラウンジで書いているんだが、ここへは家から3分もかからないのである。つまりうちは後楽園ゆうえんちの隣に立地している。ジェットコースターの悲鳴が毎日聞こえ、ドームでコンサートがあれば毎度8時45分に爆竹のような音がして歓声が聞こえる。ここへ引っ越してきた当初はまだドームではなく、後楽園球場はオープンで、野球中継があると歓声はやや遅れて聞こえてくることで「こだま」は「ひかり」より遅いと知る。コンサートでは西城秀樹が一番声が届いた。キャンディーズやピンクレディーは歓声の方が大きかった。

 前々回かで書いたアーキネットの物件の説明を受けに代官山に行く(事務所が代官山)ししろーが「悪代官山」とかつまんないことを電車の中で言う。ドンキホーテがいっつも連れて歩くサンパンチョスだっけ?ドン・ジョバンニが連れて歩くレポレッロとか。いつも主人についてくるが、別になんの視点があるわけでもないところがこれらの登場人物的なのである。

 代官山・・62年東京に住んでて初めて降りた駅だが、若者がいっぱいで、おしゃれなカフェなどもたくさんあり、それにその悪代官の屋敷あとなのか広い邸宅の跡地に低層階マンションが立っている。こういうのは2億以上する物件と見た。

 誰が住んでるんだろうかね?足立区民よ暴動でも起こさないのか?いや、もう革命は起きない。それぞれに各自「美味しいもの」なんかあてがわれて、お腹いっぱい。おまけに四角い画面の機械を各自に配られていてそれ見てれば不満も解消。美味しい、と感じるものに階級差があっても、それは「趣味」だから、という考えに収斂できる幸せに私たちはもう敵を失ってしまうのである。

 唯一「革命」が起こせるとしたら、つまり階級を無効にするという意味でだが、それは「結婚」だ。

革命失敗。

 さて、そのアーキネットは大変シャレオツな建物の中にあり、しかし壁が白過ぎて白壁病を発症しそうだったが、看板なども小さく建物内で迷う。決して文京区などにはない感じな建物である。バング&オルフセンからは静かにジャズが流れる室内でこれまた清楚でクレバーな感じの社員さんから説明を受ける。絶対ゼネコン系の土建業者にはいないタイプ。素敵な建物を街に。というような思想もある様子。そうだよ、日本、土建屋天国でごちゃごちゃ。どんな貧しいヨーロッパの都市ももっとずっと美しいよ。

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土建屋:すみませんね、センス悪くて。

先生:いえいえ、土建屋さんだけではないですよ。

土建屋:サラリーマンはいろいろ規定があるんですよ。ヒゲ禁止とかストライプのシャツ禁止とか長髪はもとより染めるなんてもってのほか、但し白髪染めはいいんですけどね。

先生:いや、さっぱりしてた方がいいですが、みんなと一緒の方が安心思想が個人をダサくはしてますよね。

土建屋:仕事は地味ですからね。

先生:仕事もみんなと一緒、前例踏襲で自己を見失いどんどこコピーミスをしても気が付かない感じですか。

土建屋:ところでその物件は買うんですか?

先生:いやタイミングが悪く、本郷の物件はあと二件しか残っていないし、ここがもしやリ・セールに出たら考えます。

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日本にもまともな家を建てようとしている土建屋がいるということがわかって嬉しいが、今日その会社から送ってきたどこかのアーキネットの物件で実際住んでいる皆さんのまたもおしゃれな生活の映像というのを見て少し考えるところがあった。

子供達と素敵な夫婦が何組か。子供達はすでに友達で共有なデッキで遊んでいるのをうちの子じゃなくても見守ったり、壁は打ちっぱなしだけど暖かい空間に設えられたファブリックはデザイナーじゃないと選べないだろうくらいなセンス、おとーちゃんは時にリモート。リモートでもちゃんとボタンダウンのシャツ着るんだ。椅子はセブンチェアーかアリンコチェアーかそのもどき。もちろん潜水艦の中で使用するという蛍光灯などという不粋な照明はなし。なんかいつでもほのかな光の中で暮らす。お子達はそのセブンチェアーもどきに座っておやつの時間。

 うーん。

 昨日も帰りサンパンチョスと神保町で飲んでから痴話喧嘩。家に帰ってからもバトルは続き、猫2匹は家中を楽しいんだか騒がしいのが野生を呼び起こしたのか駆け回る。喧嘩も新陳代謝の一つ、などという生易しいもんではないが、老人だから疲れて寝て、老人だから前日のことは半分くらいしか覚えてないので、また日常は続くにしてもだ。

 誰でも「どうしょうもない」現実を生きているのではないか?だからこそあらゆる気晴らし、アミューズメント、消費はレゾンデートルを得ているに違いない。もちろん音楽もだ。

いやしかし私が追求している「音楽」とはそれ自体がレゾンデートルになるような有りようというか・・享受者なんかじゃやだ。加害者になりたい!という欲求は、この「どうしょうもない」現実をひっくり返すんじゃないかという実験である。

 いやこのシャレオツな物件であいも変わらないヴェリズモ・オペラを展開するかと思ったら恥ずかしいような気もしたし、せっかく素敵に住んでる他の住民の方々にも申し訳ない気がするし、お子達の教育にも悪かろうし、そのうち素敵なみなさんに満場一致で追い出されたりしないかと心配になったんです。コーポラティブハウスですからね。

サンパンチョスじゃなかった。調べたらサンチョ・パンサ、だった。アミーゴ、セニョリータ!

 

 

 

 

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