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ヘン

 声はその人全部を表現しているので、嘘ついてもわかるし(身近な人なら)大体の生活とか性格もわかる・・なんて書くと怖くてレッスン来られないかもしれないが、もうこの道20年にもなればそれにどんだけ〜というほどレッスンしてるし、延べ人数が半端ないので、それは統計学でもある。

 声を変えると人は変わる。

 最近は声楽どうのこうのよりとにかく声を出さないで死んじまうのはもったいないよーという気持ちでいっぱい。ここで初めて声楽を習って(50過ぎてたり60過ぎてたり)で結構うたえるようになってしまう人をたくさん輩出しているが、国民全員に歌のレッスンをしてみたら、大歌手もたくさん出てくるんだと思う。

 前にも書いたと思うが、尺八の先生で、口の形が尺八に向いてないと弟子にしない、という人がいて、でも電車乗ってたりすると、「ああ。尺八に向いてる口の形・・」と思っちゃうサラリーマンがいたりするらしい。

 一回キャバクラ嬢に声楽を教えてみたいと前から思っているが、水商売の人は向いてる。大体声楽は水も出さない水商売だからだが、あのドレス着て自己を売りに行くようなことを生業にしている時点で性格と体が声楽向きに違いない。

でも静かに30年漬物のように家にいる静かな主婦、なんていうのも発酵寸前、発狂寸前で「その気」になってくれるなら遠いけど一緒に声を出す道を探ることはできるし、かなり上手くなった人もいる。

声楽的発声に遠い人と近い人がいるんだが、出したいと思う思い方の多さが大事。

なんか周囲と違和感、などと思っている人は声楽を習ってみると良いと思う。違和感というのは何かを探すセンサーではないかな。馴染んじゃってるものを救い出すことは難しい。

中学の時の友達が、就職活動してる時、何やっても「フツウ」になっちゃう自分が嫌で「みよこの真似」してた時があって(ふん、失礼ね)就職の面接で読んでる本聞かれて読んでもいないのにみよこの真似で「太宰治」とか答えて落ちてたが。その後「フツウ」に結婚して「フツウ」に子供を儲けて、でもその子供がぶっ飛んでて婚外子作って出戻ったりして、思い通りに「フツウ」から脱しられてよかった。

「フツウに就職してフツウに働く、そういう生活をしない男に娘はやれん!」といった児玉清に「でも、フツウってなんだよ」と呟く柴田恭兵(山田太一作「思い出作り」私はこのドラマは山田太一の最高傑作だと思ってる)

フツウってなんだよ。

小中高校と「ヘン」とか「ユニーク」と言われるのが嫌でおとなしくなるべく「フツウ」にしようと努力してきたが、その後こんな鼻腔共鳴を使った生業などという「異常」なことを毎日していて、もっと本格的に「ヘン」でなくてはできないが、それにはいかにも足りない・・「ヘン」が。

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土建屋:フツウ代表のような扱いをされるのかなと。

先生:息子さんが引きこもり、などというのも最近じゃ「フツウ」なことですしね・

土建屋:嫌なこと言うんですね。

先生:家族なんかどこでもみんなヘンだし、うちはヘンじゃないです、と思っている人ほどヤバいことが多いと思いますよ。ヘンじゃないと思ってる人って差別的だし無能を「ヘンじゃない」と言い換えるのも良い加減にしたほうがいい。凡庸ですみませんくらいに侘びながら生きててほしいと思います。

土建屋:誰に怒ってるんですか?

先生:無能なヘンじゃない人たちです。

土建屋:まあまあ・・。

先生:でも大体はそういう見えない敵というか、「無自覚な大衆」というのはどんな時代でも作家や思想家の敵ですが、そういう偉い人を味方につけないとやーい「へんなやつ」といじめられて現生で嫌な思いしてることへの怨念がはらせません。大抵の文学はそこに立脚してる。オペラなどもへんな人しか出てこないへんな話ばかりです。それを普段は絶対出さない素っ頓狂な嬌声で何時間もうたい続けるなんて狂気の沙汰です。

土建屋:へんじゃない人は文学も読まないしオペラも見ないですもんね。

先生:そうなんです。文化が希薄です。日頃の違和感を文学やら声楽やらで晴らして溜飲を下げようとしているわけですが、それはそれで才能が足りない、でも「そっち側でうまくやってる人が芸術の月桂樹を一葉だって摘むことはできない」(トーマスマン「トニオクレーゲル」)という言葉を戒めの言葉にしております。

土建屋:難しいなあ。やっと涼しくなりましたね。年末ですね。

先生:大掃除が約半分終わりました。ずいぶんいろんなもの処分したけど、多分今持ってる家財道具の三分の一で暮らせる。すっきりした暮らしをしたいというのに元旦那など呼び寄せたりして「ヘン」すぎです。

土建屋:ほんとへんですね。

先生:フツウに暮らすとヘンになっちゃうところはあるんですが、離婚したのは私のせいでもないし、ししろーの実家って「普通が一番」みたいな家ですけど、こういう傑物を輩出する、ああいう家が一番やばいんですよ。「フツウ」であることが全部の理由になってるようなので、こういうへんな人物が出ても面白がってもくれないし、厄介者扱いですがさらに恐ろしいのはししろー本人が自分は「フツウ」だと思ってるところです。この人と暮らしてると自分は「フツウ」だなあとしみじみ思います。

土建屋:あははは。でも先生の話聞いてるとなんだかホッとしますね。少しでもはみ出しちゃいけないと神経張り巡らせて生きてることなんかないんですね。

先生:そうです。へんでもフツウでも自分でいましょう。どんな「神」の指図も受けません、自分が「神」になることです。

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多分それが究極の「ヘン」だろうよ。

 

 

 

 

 

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