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叫ぶ力と声楽

 声楽に必要なものを一個だけ挙げよというなら、もうこれは「自己顕示欲」でしかないと思う。

 人生は(また敷衍)自己顕示欲の量とその処理の仕方で決まる。

多いからといって押入れにしまったり、海に流したりはできないのである。無い、ということも生きているからにはないとは思うんだが、少ない人はいるよね。

 少ないなら少ないなりに生きていけばいい、というような考え方が嫌いだが、実際はバランスなので、少ない仕様の生き方を選んでいることが多いだろうし、そういうの「自分にしっくりいく」のだとは思うけど。私は無理をする人生が好きな変態である。

 身弱、身強という考え方が四柱推命にはあって(これまた挫折したんだった。もう勉強というものは全部ダメなのだと知る)どちらもレベルが確か5段階くらいあり、最身強みたいなものもトラブルが多くてダメなのである。

 ほどほどがいい、というのは生きていくに必要な処世だが、さっきも言ったがそういう「上手くやってる人」が好きではない。

 バランス悪く、あるいは良くまとまってしまってる人も、とにかく声を出したいんっす、どうにかなんねえべか先生よ、とやって来る。よし引き受けましょう。

 まずは周囲に気を使わないこと、自分を愛しまくること、叫ぶことです。

手っ取り早いからうちの隣でやってるジェットコースターに乗ってきてほしい。素晴らしい声がでるはず。ジェットコースターというのはこの「嬌声」を出すためにある装置だが、その声はうちの中まで入ってくる。電話越しにも入るようで、「どうした?悲鳴が聞こえたけど」と言われたりする。昔ウディ・アレンの映画でジェットコースターの下に住んでる(家賃が極端に安いから)家族の話があったが、何分かに一回家が揺れる。うちもそんなもんで、何分かに一回悲鳴が聞こえる。

 その矯声を「声楽」にするには後ろをあけて回せばいいのだが(ほんとこれだけなのである)そもそもの嬌声が上げられないならそこから、ということに。猫でも犬でも鳥でもやれることなので、猫は鼻腔共鳴で鳴くと必ず振り向く、と言ったら、道で野良猫に遭遇するたびに振り向くまで試してる生徒がいるが、変でしかないが、そういうことやろうというところがもううたが上手くなる素質大である。

 音痴だなんだといちゃもんつけられて60年。なんの因果かうたの先生になってしまい、中学生から宝塚受験生から最高齢で80過ぎのみなさんを教えているわけだが、もうこの先一人でも多くの人を鼻腔共鳴できるようにして、さらに自分のうたも落とし前をつけるべくイタリアに行く。わかるまでやる。

 私はイタリアの音の中にしか本当を見つけられない。

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土建屋:うたの話ばかりでちょっと寝てしまいました。

先生:ここは声楽教室なのですから、あまり歌と関係ないことは書かないんですよ。

土建屋:今までは関係ないことばかり書いてたじゃないですか?

先生:最近またうたが興味深いもので。いや、建て替えは進まないんですね。

土建屋:隣の学園に訴えられていて、境界線で決着がつきません。

先生:私は最近この日本国で初めて住みたい家!というものを見つけたので、もう土建屋さんたちの建てるタワマンには住まないのでどうでもいいです。

土建屋:ほお?それはどこなんですか?

先生:アーキネットというところのプロジェクトです。あちこちにあるようですが、この度本郷に出来るようなんで、でももう二件しか残っていないので、どうしよう、という感じです。ここの立て替えの時期と東京のマンション高騰とこの先の下落と私の年齢といろいろな変数を入れて答えが出ないので、レッセフェールです。

土建屋:なんかシャレオツな物件ですね。住んでる人が萎縮しちゃうような。

先生:目に見えるものが美的によくないと。毎日中古マンションのご紹介が野村不動産から送られてくるが、何億しようがダサい。壁紙はサンゲツだし、水回りはトートーかイナックス、床は合板の板が貼り付けられていてフローリングというが、ダサダサではないですか?こういうのしか選べないのか?とほぼ絶望してたのです。どうせここだって建て替えられれば下駄箱マンションになるし、今の家はかなり手を入れてます。やっと見える範囲に美的に許せないものが減ってきたというのに。こういうのも音楽の勉強と一緒でだんだん良くしていくのでいいと思いますが時間がかかる。あんな合板マンションをこの先もらっても好きな感じにするまでに死んでしまいます。日本人ももう少し文化が向上しないと、投資目的の中国人と選ぶところがなくなります。長くなりますが、お子さんの音楽教育とはピアノをいきなり習わせるとかではなく、まずは家で何か聞かせてくださいよ、それも始終かかってたらいいんです。フランス近代和声を理解するのは10歳までだと思います。絵画を見せに美術館など行く前にごちゃごちゃな色彩の家の中を日常で見せるのは目に毒です。

土建屋:そうなんですけどね。コストとかいろいろあってそんなふうにはならないんですよ。そこだって20階にしないと居住者負担が増えますし。

先生:だからお金かかってもいいから今あるマンションを耐震にして配管を変えるとかしていただいたほうがいいと思うんです。やっと景観に馴染むようないい感じになってきたではないですか。ここに20階を建てるとこの地域は日照がなくなるばかりかうすらぼんやりした住居はどんどん大手土建屋に狙われると思います。うすらぼんやりした住民は追われる形になるでしょうが。

土建屋:戦争ではないんですから、追われるとか人聞きが悪い、ご納得の上売るなり残るなりということで、みなさん喜んで出て行かれるのではないでしょうか。

先生:だから文化なのだと力説したい。いくら積まれても絶対変えないというような信念がない。まあ、この地域のビルなどどうでもいいくらいにセンスないですが。いいですアーキネットに逃げます。

土建屋:でもレッスンはそこで出来るのですか?

先生:さて、店舗物件でも借りるしかないかな。それはそれで楽しそうでいいです。レッスン終わってからは飲み屋にしてもいい。私は帰るので、勝手に飲んで勘定払って、伝票つけて、できたら掃除して鍵閉めて帰ってくれたら尚良い。

土建屋:そんな店あるわけないでしょう?

先生:あるんですよ。神楽坂にあった。あとゴールデン街にそういう店があったとタモリが言ってた。店主は高齢で夜は8時半に上に上がって寝ちゃうから、その後皆で切り盛りして会計締めて帰る。年末は皆で大掃除するって言ってました。理想です。

土建屋:楽しそうではありますね。

先生:私はどこでもレッスンが出来ればいいのです。この世の中で「声も出さずに生きてきた」みなさんに声を出す解放を!

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ここ亀戸で今日はピアノのレッスン、クープランはそれほど問題がなかった。さてさっきから亀戸のイタ飯屋で入力。隣に何組かおばさん2人組が座ったが、みんな「家族」の話ばかり。東京は川を一本越えるたびに「家族」が深まる。自己顕示欲など育ちにくいだろうし、強すぎる自己顕示欲は弾かれる元だろう。「声楽」をやるしかない。一応集落の皆さんにも「変わってね?よくわかんないけど」くらいには許せてもらえると思う。

 

 

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