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はるばるきたぜイタリア2

 もうとっくに帰ってきたが。

その一週間は大袈裟に言ったら人生変えるくらいの衝撃であった。

バルバラ・コスタ先生はまだお若い先生だが、声の出し方の全てを知っておられるような、いやご本人の声が素晴らしいのは知っていたんだが、教え方がこんなにシンプルでわかりやすいとは・・。前回2回だけ見てもらっているんだけど。それは先生を替えるにあたって「よいかどうか」の「下見」であった。

コーディネーターでもあるピアニストのミホコセンセイが、私とイカラシを、イタリア旅行をしているおばさん2人組で、ちょっと趣味で声楽をやっているけどせっかくだからイタリアの先生に見てもらいたいわーという体(てい)で見てもらっているが、イカラシだって藤原の団員だし、私も二期会会員ではあるので、そこそこ歌えるのであり、バルバラ先生には「趣味にしてはうまい」と言っていただけたのである。

今回は正体をバラしてレッスンを私、イカラシ、私の生徒一名で受けに行ったのだが「仕事にしてる割には下手だ」と思われたかどうか知らないが、とにかく熱心なレッスン、そして今更思うが、ベルカント唱法はこのインターネットに時代どこにいても習えると思うわけだが、いや、やはりイタリアに来ないとわからないことが多いのですね。

日本で多くが習っている(私もずっとそれが正しいのだと思ってやってきているのだが)声楽って、

カレーうどん

である、と前にも書いたが、カレー粉は使ってる、というところでカレーではあるが、出汁で割って醤油を入れてネギを散らしてうどんにかける、というところでカレーうどん。本場のインドカレーは最近どこでも食べられるようだが、作り方も何もかも違うのである。

うまいカレーうどん

というものはあるし、でもその追求に私はあまり興味がないのである。

もう後半生は本場のインドカレーを追求しようということである。毎度行くたびにそんなことを言ってるような気もするが、今回は流石によくわかった。

カレーはやはり香りとか辛さとか、実際食べてみなければ伝わらないことが多いように、やはり行ってしまうのが早いが、とはいえこの一ユーロ160円にもなっている昨今、そうそう行けないじゃないですか。まあ力及ばずながらそこ、この私がなんとかお伝えしようと思っているわけです。

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ミラノマルペンサ空港に降り立った我ら3人はレッスン会場近くのアパートのようなところに民泊するんだが、その部屋の綺麗なことと言ったら。どうしてイタリアって全てが素敵なんだろう。そして機能性が低いというより、機能が一個、エレベーターなら運ぶだけ、お湯沸かしならお湯を沸かすだけ、トイレは流れるだけ、いやそれで何が悪い、だが、余計な機能がつかないし、説明がないので、毎度それらの使い方に苦慮するが、だんだんシンプルなのは素敵なんだなと気がつく。素敵優先。うちの湯沸かしポットはお湯の温度が98度、82度、75度と3段階ある。一度も使ったことはないが、煎茶を入れるとか、赤ちゃんのミルクを作るとか?もちろん保温機能もあるが、タイマーもある。チャイルドロックもあるが、そんないろんなものつけてくれるとごちゃごちゃして汚い。説明書も長い。我がマンションのエレベーターは、ケチケチ一台だけが新しくなった(建て替え前提だからか)が、最新エレベーターは静音設計すぎてたまに止まってるのかと思い焦る。イタリアのエレベーターは昔のイタリアリアリズム映画の頃と何も変わらないおしゃれな手動式ドアで、映画の中の人になったような気分だが、凄まじい衝撃で中で寝過ごさないようにできてるのか、毎度悲鳴をあげるほど驚く。

部屋がおしゃれ。今回の3人は酒飲みなので、毎晩レッスンよりはるかに長い時間飲んでるのだが、イカラシが新潟から持ってきたワサビ味のピーナッツ抜きの柿の種はほんとに美味かったが、なんと部屋と合わないパッケージ、そもそも日本から持ってきたものはこの部屋に合わない、第一自分がこの部屋に一番あってないんじゃないかと萎縮してしまう。窓枠が綺麗だよね。日本のサッシ会社に告ぐが、丈夫で雨風凌げて素晴らしいが、外観をもう少しマシなものにできないのであろうか?

どうも泊まってた地域は高級住宅街らしく、住居にはほとんど中庭がついている。特に何に使っているわけでもないスペースである。レッスン会場もそう。かなりの面積は何にも使われていない芝生の中庭である。ベンチとかもないので鑑賞するだけ。日本の土建屋だったらこんな「ムダ」なことしないで建蔽率ギリギリまで建てるんだろうよね。ださ。でも今桜蔭学園と境界線10センチで裁判になってて(桜蔭の作戦だろうが)こちらはそれを考慮して図面を引き直すそうだが、あのさ、そうなるともしかすると一軒一軒の資産価値が微妙に違ってくる、なんてこともあるんだろうが、死んだら金は墓場まで持っていけないとはみんな言うことだし、特に貧乏人はそういうことを言いたいだろうが、建物は残るのである。金は吹き抜けるものだが、文化は定着するものなのである。そしてこれも貧乏人がよくいうことだが、子供に金なんか渡すとロクなことにならない。それは子供によると思うが、渡そうが渡すまいが吹き抜けていくものに変わりはないのである。

でも建物は残る。100年経っても素晴らしいと感嘆されるようなものを立てて欲しいと思うが。サッシと最新セキュリティーのペカペカな20階建てのヘーベルハウスみたいなの、勘弁してほしい。中庭を有するヨーロッパ風なものを建てたとて、ここに建てるんだったらせいぜいディズニーランドか目黒エンペラーだ(古い)

土建屋:呼ばれましたでしょうか?

先生:すいません今日は書くことが多くてあまり土建屋さんとお話もできないのですが

土建屋:いや、でも日本の最近の建物は景観にも気を配っておりますし、第一耐震はしっかりしているので、日本は地震大国ですからね。そこはほんと世界一と思っております。

先生:まあ、機能と美観、つまり文化は両立しないのか、というのはスエーデンの家具などのテーマでもあると思うのですが、そういう「苦悩」もないように思えます日本の建物は。「やりたい放題」をやめさせるには「規則」なのか「自主」なのか。そこは建築などを学んだ方も多く擁している建築会社の皆さんに頑張って欲しいと思うのですが。

土建屋:特に東京は一大実験場になっているので、新しい技術ができると我先に採用して実現してきたということはありますかね。

先生:私は湾岸にあんなにタワマンを建てて大丈夫なのかと心配してますが、最新技術を持ってすれば大丈夫なのか。私の頃一番高い建物といえば霞が関ビルでしたが、今見ると絵本の「小さいおうち」のようです。あれだって昔はこの地震大国に大丈夫なのかとみんな訝しんだものですが、どうなりましたか?旧耐震だから建て替えですか?今は東京ドーム何杯分と言いますが、昔は霞が関ビル何杯分という言い方がありました。あの頃のビルは今解体ラッシュです。内幸町にある第一勧業銀行本店も壊されました。あそこの4階で私は新婚当初パートをしてました。ハートのついたダサい女子行員のブラウスを3色借りてました。外国為替なんとか課というところです。組織が大きすぎて何やってるか全く理解できなかったけど、みんな親切だし、社食は100円で食べ放題だし素晴らしかったけど、こんなこと一日やってるなら何もお金使わないで水でも飲んで家にいた方がマシだ、と強く思ったのを覚えてます。「主婦枠」採用の当時103万だったかの壁の中で働いているパートさんは大体「調整」で週4日で9時半4時までだっけな。帰って「主人」の飯を作らにゃならんからですが、もう涙が出るくらい幸せで虚しくて、私は本当に初めて神に祈りました。「生きたいです」と。

土建屋:話したいことはイタリアのこととばかり思いましたが、結構長く関係ないことを語るんですね。面白いですが。そんなことやってた時期があるんですね先生にも。

先生:本当に思いました。生きるってなんだろう?毎日虚しくこんな仕事をすることがなんになるんだ?(答えは金になるんだ、ですが)妊娠したのでとたんに辞めましたが、パートのみんなとは仲良くなって送別会など開いてくれました。やれやれ「子ども」に逃げた私ですが、ここ端折りますがその先やはり自分の中で本当に生きるとはなんだ、と常に問うてきたと思うんですよ。それは「うた」の中に答えがある、と今回ほんと「実感」しました。63ですよ。紆余曲折、今思えばどれだけこの「うた」に賭けてきただろう、時間とお金と気持ちと。でも無駄はなかった、いや無駄だらけだったがまた端折りますが生きててよかったと思いますよほとんど初めて。

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その作った子どもたちは割と育てやすく、お金はかかったがさっきも言ったがお金とは吹き抜ける風であり、定則不能なのである。子ども作る前に一人当たりいくらかかるから産まないとか産むとかいう試算は無効である。そしてあんなに真面目だった田舎から出てきた苦学生だったししろーが「ししろー」になるまで。細腕繁盛記、はすっかり腕も太くなったが、バルバラコスタ先生の「豊かな」声と体を体現するにはまだまだ何もかもが足りないがその端緒についたと確信する。

自分の声を見つけることは自分の生き方を見つけることなのだと私は思うもので、それがわからない限り何もないのだと。旦那が立派だろうが(立派な方がいいが)子どもが東大に入ろうが(入ったが、ハハ、自慢です)

そんなことじゃない。あなたがあなたであるために。自分探しの旅に出ているヨレヨレのバックパッカーを冷笑するのは簡単だが、やってみ、生きてるってなんだかよくわかるから。

 

 

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