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発表会

 発表会は大きいのは年2回行っている。たった2回なのに気がつくと発表会前なのである。そしてまた合わせが土曜にあったのだが、ここでうたうのって、私、杉崎、島川先生がじーっと見てるし、本当嫌だろうと思われる。ここでうたうより本番の方がどれほど気が楽かしれない。まず客席が暗いし、お客は少ないし遠いし先生はいないし。

 うたでもなんでも向き不向きがあると思うが、不向きなことはやらないのが普通だが(私は決してスポーツ関連のことをしないというような)ことうたに関しては不向き、な人がいくらでも来る。私は不向きな人をうまくする天才だと自分で言っとく。私の先生など、発声が変な人とかホウツキって教えてるの?とか聞いてくるが、発声なんかみんな変である。それをある程度声楽むきに変えるのが私の仕事であるが、生徒さん側に根気と忍耐があれば絶対上手くできる自信はある。ある程度やったことのある人ならわかると思うが、こんなに簡単なこともこんなに難しいこともそうそうないんじゃないかと思う声楽って。ピアノなど簡単な要素は一つもない。

私自身がうたはスポーツの次くらいに苦手で不向きだと思ってるが、父親が昔、おい、絶対これだけはやりたくない、ってものを作っちゃいけない、それを仕事にしちゃうことが多いからだ、と謎の予言を託していたが(本人、計算が大っ嫌いなのに、志願していった軍隊では計算兵にさせられ、戦後も経理で食ってく羽目に)そうなったのかもしれない。私はうたが嫌いなうたの先生である。嫌いだから放っておくとうたわないので、そろそろリサイタルでもしないといけない。木田さんがまたリサイタルを11月に開くが、7回目。私に唆されて始まったんだが、前回一番うまかった。やっと歌いたいうたがうたえるようになったと言ってる。継続は力なんである。もう80歳がこんなに頑張ってるのに、先生、頑張ってくださいよ。

 ついでに思い出してるが、私の父親って本当働くのも大嫌いだった。こんなに働くの嫌いな人間はそんなにいないと思う。みんな嫌いだとは思うが、ちっこい目標とか出来もしない大きな志、など持って自分を騙し透かし働くもんじゃないの?毎日ヤダヤダ言ってたね。六十ですっぱりやめて悠々自適に入って10年くらいで肝臓悪くして死んだ。死ぬ1ヶ月くらい前に、生きている意味がわからないという電話がかかってきた。私は初めて父親を尊敬した。

 金を好きな人は多いが、金に好かれてる人は少ないと思う。働くのはあんなに嫌いなのに、たいして働いてもないのに、お金が入ってくる相だったんだと思う。前の奥さんと子供2人と謎のその奥さんの妹まで養っていたが。毎日夕方5時から飲み屋で飲んで、タクシーでパチンコ屋に行ってた。パチンコもなぜかうまく、一回一緒に行って習ったが、ピアノの先生より厳しかった。毎度何か欲しい商品はないかと聞かれ、色々持ってきてくれたが、持ってきすぎ。大量の「リッツ」「パイナップルの缶詰」などはもうそこから10年くらい見るのも嫌だった。あと「漫画」があると言うのでもらってきてもらったが、それはほとんど「エロ漫画」なのであった(パチンコ屋の景品なんだからさ)こんなの娘にくれるか?「ピンクのカーテン」とか全部読んじゃったよ。パチンコ屋の帰りに10万拾ったりしてた。警察に届けたらのちに持ち主が現れ、お礼に来たが、家で大盤振る舞いしてた。

 生きてる意味がわからない。

みんな思ってることだが、ちっこい目標とかできもしない志とか持って生きていくものなんじゃないの?そこ問わないのが大人なのではと思ってたので、死にかけのじいさんがそんな原初的な若き青年の悩みみたいなこと言うから感動したのだ。あんたがわかんないならさらに私はわかんないよ。子供のためとか「大義」「理由」を見つけてなんとか毎日を「忙しく」「有意義に」生きていた当時の私はさ、電話切った後に泣いた。

 この人はいくら子どもたちに無体な要求をされても、お前たちのために働いてるなどという道徳くさいことは一回も言わなかったよね。私が音大に入り直すときに、一応悪いからいいかどうか聞いたら、100年経ったらみんな死ぬんだから好きにしろ、と言った。こんなありもしない才能に1000万も出す親って可哀想だと思ったけど、そうだ、人なんかなんで生まれてきたのかもなんで死ぬのもわかんない一瞬を今ここにいるだけなんだからさ、好きにしたらいいんだ。気が楽になった。

 ありもしない才能ではあるが、こうやって20年声楽教室を開き、そこでは多くの人たちが向いていても向かなくても声楽というもんがうまくなり、巣立っていったりとどまってたりするが、家でゴロゴロしたたら絶対会わなかったような人たちに会えて良かったと思ってる。

 すごく稀にうたってるときに「下から繋がった」と思うような瞬間があり、こういうのちょっと「生きてる実感」かもしれない、と。体とか丹田とかそう言うところになんか「意味」のようなものがあるんじゃないか、と言うような。

 自分のことはよくわからないが、人のことはよくわかるようになったので、どこ直したらいいか聞いてくれればかなりいいこと言えるんだけど、それをどう伝えるかが教えるって一番難しいのだ。あと独善に陥ることがままあるから、合わせで杉崎、島川先生がいてくれるのはとても助かる。

 みなさん発表会頑張ってください。

 

 

 

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