声楽などという一番唾が飛びそうなジャンルがこれからどうなるのか知らないが、うたの喜びを知ってしまったものはうたえないくらいなら死んだ方がましだと思っているのでうたうことになるだろう。うちで一人でうたってるぶんには感染しないからうたっててください。
それは依存症に近い。
このどさくさでカジノ法案が通ってしまいそうだが、どうするんだろう、パチンコ依存症の人々のコロナ禍でもあの熱心さを見たらわかると思うが、ああいう状態の人があちこち海外からも来るんですよ。他人の「依存症」は見苦しいからそんなもん見たくもないが。が、自警団が心配しているに及ばず、依存してる人は火の中でも暑くないくらいな勢いなので、コロナには罹りにくいだろう（エビデンスなしだが）
かかりやすいのは、コロナなんか心配してません、あるいは、コロナかかったらどうしようと心配している人、つまりコロナと同じ次元にいる人々だ。依存症者は超越者である。宗教なども同じだと思うが。
依存症になるくらいにやらないとうたなんかうまくならんと思うが、パチンコと違って景品も出ないし、換金も出来ないし、ほぼプロにもなれない（パチプロより可能性としては低いと思う）金はすり減らさないから、その後の合併症としてのサラ金苦とかはないと思うが（わかんないよ、カーネギーホールを借り切ってリサイタル開きたくなるかもしれないし）もう一日中うたの事ばっかり考えるようになってしまう弊害、マスケラを鳴らしたくなる弊害（静かな仕事とか辛い）２０００人に届くような声を目指しているうちにどうしても自己肥大を起こす弊害（太るということも含め）あと一番まずいのは、日常生活がくだらなく思えてしまう弊害。
始めたころ日常がくだらなく思えて仕方なかった。下の息子が幼稚園行ってる頃、ちょうど二期会通ってたんだが、幼稚園ママがアホに見えた。また実際アホだった。
幼稚園ではママ達が、なにか「お役目」をやらなければならない決まりだったが（都心の送迎バスなし、給食なし、延長保育なしの２年保育など人気が無く、１学年１３人しかいなかった）人数少ないので、２年のうちには何かやるはめになる、写真係という、遠足の写真や、運動会の写真を模造紙に張り付けて番号を書いて、というのをやる写真係を仰せつかったママが（彼女は働いてた。日テレで朝いちばんの外電を訳す人だったが）それは各自自宅でやりましょうと言ったら、何人かのママに一斉に無視された。私のところに泣いて２時間電話がかかってきました。「あなたはやる気がない」と言われたって言うんですね。きえー、くだらないでしょ？でもこの手のくだらない話はどこの幼稚園でもあるんですよ。
ほらまた先生、テーマの専業主婦攻撃に走るんでしょ、と思っている読者は多いだろうが、くだらないいじめなんか会社だって、声楽界だってどこだってあるが、子どもっていう仲介物がいるところでもやるんだよね。もっとちゃんと生きないとこの先子どもにバカにされるよ、と思ってたが。
私はこういうところでは「絶対的に変だからいじらないでほしい発信」を早くから出してしまうので、いじめられない、いじめる気にもならないのだと思う。陰で何言われても全く気にならないが、いろいろ言われてたに違いない、二期会では「夕鶴」をやってたので、着物で送り迎えしてたし、むしろ優越感でしたね。でも二期会では演出家にしごかれたりで、結構嫌なこともあったが、そこは幼稚園ママのバカさ加減に救われてもいたんだが。
でも先日、スーパーの店先で、当時の幼稚園ママにあったんだが、ちゃんとうちの息子の近況の色々を知っていてくれてですね（村だな。どうして知ってるのか）私は彼女の娘の名前も思い出せないというのに。いい人たちだったんだよね。自己顕示欲も自己肥大もなく、ありのままに良い人でいられるなんて、思えば特技ではないか。「なにか」である必要などない。ただ生きておれ、という感じですか。子どもの成長とそろそろは結婚、次は孫、そんなことの中にある悲喜こもごもをですね・・・・
それがいったいなんだ！というようなことを考えてしまうあなた、うたをやるといいですよ。
しかし、やっていくうちにですよ、自分のうたの何たるかも知り、自分の位置も知り。当時じぶんの見積もりは大きかったが、二期会に行ったり、リサイタル開いたり、たくさん教えたりするうちにどんどん減り、一を下回るようになって、その先もとの一に戻り、そこから０．１ずつでも広げていくというような努力をですね、続行していく。
今日午前中やった練習の中でも分かったことがあるが、ということは昨日までわからなかったということなのですよ。わかる喜びって言うけどさ、こんなこといつまでやるのさ。きっと死ぬまでなんでしょうが、「日常を生きる」以外の目標があるって生きてることよりずっと素晴らしいと思えるような倒錯がここにはあります。
